キム・ヨナのアビナヤ

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世界最速のダンスといえば、チャイヤ・チャイヤchaiyya chaiyya でもゴム男プラブ・デーヴァーPrabhu Deva でもなく、フィギュア・スケートだ。

フィギュアは運動競技でもあるわけだが、ダンス・ナンバルとしての現在の最高峰は、キム・ヨナ死の舞踏 Danse macabre だろう。このスケート・アメリカの映像ではジャンプ・ミスがあるが、初披露のこれがいちばん好きだ。

この踊りのどこが素晴らしいのかを言葉に置き換えてあらわすのは、外国の詩を翻訳するようなもので、ほんとは不可能だ。
でも、古典理論であるバラタ・ナーティヤ・シャーストラを借りて説明すれば、アビナヤに優れているといえる。

アビナヤは、ラサつまり愛・喜・哀・怒・勇・恐・憎・驚などの香気をバーヴァ=存在形態に換えて伝えるための表現手段で、
1)アーグニカ:肢体の動き
2)ヴァーチカ:言葉による表現
3)アーハールヤ:衣装・装身具の使用
4)サーットヴィカ:表情など全身を用いた感情移入
に分けられている。

キム・ヨナショート・プログラムの場合、2)はないが、それ以外の全般にわたって秀でている。
スピードと正確さのあるジャンプだけでなく、単なる助走になりがちなジャンプとジャンプの間に、手先までゆきとどいた踊りが振付られている。
コスチュームのセンスもいい。
さらに、表情演技とメイクに説得力がある。(「ジャンプより笑顔を作るほうがむずかしい」by ヨナ)
ヨナ自身の才能もあるだろうが、韓国はフィギュアの歴史が浅いために、かえって伸び伸びと育った感じがする。

このほかにも、ダンスとしては舞台や照明、カメラワークも重要で、たとえばOnly Hope & I’m just a girlのメドレーがすてきだ。
I’m just a girl は、初披露の、日本での Dream on ice が一番いい。