ヒールとラーンジャー

f:id:moonleex:20201025210950j:plain

 

フィルドゥースの代表作 Heer Ranjha (1970)はパンジャーブのロミジュリで、巴印でなんども映像化されている。劇中歌O Wanjali Walerya 

ローディー朝時代の実話にもとづく民間説話といわれるが、18世紀スーフィー詩人のワーリス・シャーWaris Shah が Heer の名で作品化した。まったくの創作だとの説もある。

2013年のパーキスターンTVシリーズで用いられた原詩による歌唱

 

ヒールもラーンジャーもジャットJat の支族の名称だ。ジャットは農民コミュニティーだが勇猛で、インド大統領の警護隊はジャットとラージプートだけで構成されているという。パーキスターンは、スルターン・ラーヒーのジャット映画で暴威をふるっている。

 

ラーンジャー一族の息子は財産争いで兄弟によって追放され、ヒール一族の娘の村に来る。これはパシュトーの Yusuf Khan Sher Banoo に似ている。そこで二人は恋に落ちるが、ヒールは別の男との結婚を強いられ悲劇が生まれるという話だ。

wikiによれば物語は13回、映画になっている。初の映像化は1928年で、独立後はパーキスターン4本、インド5本をかぞえる。

 

フィルドゥースは、1965年の Heer Sial でもヒールになったが沈没した。名が残るのは70年作品のほうだ。

1957年の Sehti は Heer の妹が主人公の外伝で、ヒールは17才のニーローが演じている。68年に Murad Baloch として再映画化され、Sehti 役はフィルドゥースだった。

 

インドは1970年の Heer Ranjha が、全編台詞が韻文で名高い。1992年にシュリーデーヴィーとアニル・カプールで製作されたが、これは痕跡も残っていない。

2009年にヒールを演じた Neeru Bajwa は、2012年 Jatt & Juliet と翌年の Jatt & Juliet2 でインド・パンジャービー映画の興行記録を更新している。ただ話は別物で、DDLJ みたいな在外内地恋愛譚だ。

2006年にパンジャーブ生まれのジューヒー・チャーウラーが、 Waris Shah: Ishq Daa Waaris でワーリス・シャーの妻を演じている。