始祖とされる空也は10世紀の人で、スーフィーの発生時とおなじころだ。交通関係があったのでなく、大宗教が広まる過程でイデオロギーより行為が布教に有効だった時期が重なるのだろう。あるいは宗教の原初形態がそもそも踊りだから、そこに回帰したといえるかもしれない。
空也は伝承の祖だが、拠点とした京都の六波羅密寺で踊り念仏はいまも行われている。
踊り念仏を広めたのは13世紀の一遍で、踊りは各地に残っているが跳ねる踊りと静かな踊りとがある。本来は宗教的法悦にいたる激しいものだったようだ。この点スーフィーのセマーと似ている。ちがうのは男女の僧と俗人がいっしょに踊ったところだ。
踊り念仏と念仏踊りは区別され前者は宗教儀礼、後者は大衆芸能に属するとされる。盆踊りや各地の伝統芸能が後者にあたる。残存する踊り念仏は儀礼で内面的なものだから、見せるものとして面白いわけではない。