マハーバーラタの賭ケグルイ

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いろいろ筋のからまったマハーバーラタだが、このいきさつをドゥリョーダナを中心にすえて描いたのが Daana Veera Soora Karna (1977 telugu) で、NTRがドゥリョーダナ、カルナ、クリシュナの三役を演じている。3時間46分と長いが、世界最長といわれる叙事詩の主筋がわかりやすく映画化されている。


クルクシェートラ戦争の起点は、パンダヴァ兄弟長兄のユディシュティラ王とカウラヴァ兄弟の長であるドゥリョーダナの博奕にある。このくだりはMaya Judham 偽りの賭けと呼ばれる。

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ユディシュティラは賭博好きだったが博才がなかった。「ゲルマーニア」でも戦士たちは骰子賭博にふけっていたとされ、牧畜民の習性かもしれない。その弱点を知るドゥリョーダナは、ガンダーラ国王のシャクニを使って骰子を振らせる。それはシャクニの父の骨で作られたもので、意のままに目を出すことができた。つまりイカサマ、マーヤーだ。
使われたのは四面の棒骰子で、現代のインドでもChauparというゲームで使われている。

 

博奕は運命を占う宗教的意義をもつものでもあり、王には勝負を拒めないダルマがあった。ユディシュティラは次々と負け続け、土地財産身分のすべてを奪われさいごに兄弟共通の妻であるドラウパディーを賭けそこでも負けた。
ドラウパディーは奴隷として衣服を脱がされそうになる

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が、クリシュナにささげた祈りのおかげでサーリーははぎとられるたびに長さを増して救われた。

 

クル国王の取りなしで賭けは無効にされるが、最後に申しこまれた一勝負でパンダヴァ側は再度負け追放を受け入れる。
12年の放浪と1年の隠遁ののち復帰したパンダヴァ兄弟とカウラヴァ一族の、土地をめぐる争いは最終決戦に向かう。

 

この映画の目玉はNTRによる侠気もあるワルのドゥリョーダナ、不運な善人のカルナ、時にコミカルなクリシュナの演じ分けにあり、三人の合成画面の特撮はよい出来だ。撮影の大変さがしのばれる。ただし照明の都合でほとんどスタジオ制作となり、構図は平板で舞台劇のようだ。そのかわり各NTRのクローズアップが多用され、画面に抑揚をつけている。一人三役ありきの作品だが、テルグ映画を代表する大ヒットとなった。

戦場でクリシュナがアルジュナをさとすバガヴァッド・ギーターの場面では、クリシュナの宇宙形態Vishvarupaが示される。戦闘場面の特撮は安っぽい。

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憎々しげなシャクニを演じた Dhulipala は、NTR主演の Sri Ramanjaneya Yuddham (1975) ではYayati 王となり怪物退治をしている。

 

女優はカーンチャナーとB.サロージャー・デーヴィが出ているがすでにアラフォーで踊らない。

かわりにジャヤマーリニとヘレンのダンス場面がある。

 

テルグ語では కర్ణుడు, కృష్ణుడు, దుర్యోధనుడు カルヌル、クリシュヌル、ドゥリョーダヌルになる。