NHK杯のラ・バヤデールは驚いた。村元・高橋組はまだ結成2年目なのに、楽しめるアイスダンスを披露していた。高橋大輔は元世界王者だから別競技でもスケーティングで惹きつけられるのは当然だが、村上佳菜子にお姫様だっこされていたイメージが強くて非力な印象があった。年も年だし。
ところがちゃんとリフトをこなしていた。すごい肉体改造で、氷河期世代中年の星ではないか。いまの世界トップあたりとの差は大きいが、フィギュアさすらい人ティム・コレトの小松原組とともに切磋琢磨に注目したい。
ラ・バヤデールは原題バヤデルカ、踊り子を意味するロシア・バレエの演目にあたる。なんちゃってインドの、クシャトリヤとデーヴァダースィーという趣向だ。バラモンも毒蛇も出てくるので大いなる神秘に似ている。
バヤデルカ初演舞台
アイスダンスが面白くなったのはこちらが成長したからだが、今季はロシア女子シングルがすごいことになっていてひさびさにフィギュアに興奮している。
トゥルソワを見ると口をあんぐりと開けるしかない。
公式試合ではないが、4回転を5本跳んでいる。男子の世界トップ3と肩を並べる構成だ。表現力とかはないが、アスリートとしての魅力でぜんぶ持っていってしまう。ジャンプが高く、エッジエラーや回転不足とも無縁だ。父親がサンボ選手で母親は陸上と聞くと納得する武骨な演技で、リプニツカヤのような殺し屋の本能もありそうだ。
現王者シェルバコワとの子供時代のレッスン。ダンスの才能はないのがわかる。体がかたく、踊りに興味がないようだ。スケーティングもそれほどいいと思えないが
これができるのは、体幹がとんでもなく強いのだろう。
トゥルソワを追いかけるのが2才下、いま15才のワリエワだ。
こちらも、ただただ凄い。すべてに秀でている。ジャンプ、スケーティング、スピン、演技力と全要素が魅力的だ。体もできあがっていて、子供のジャンプ合戦ではない。
4回転の本数はトゥルソワより少ないが、前者とちがって3Aを得意とするので得点力はより高い。トゥルソワはサルコウも苦手らしく、いろいろと変わっている。
リプニツカヤ効果で全露からトゥトゥベリージェ・コーチのもとに俊英があつまり、たがいに刺激を与えあって化学変化が生じたのだろう。とほうもないことだ。