サンタにお願い

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ケンタッキー州共和党下院議員であるトーマス・マッスィーThomas Massie は、12月5日にtwitterで「弾をください、サンタ」のコメントとともに武装した家族の写真を掲載して物議をかもしている。クリスマス画像としての異様さだけでなく11月30日にミシガン州の高校で生徒による4人の射殺事件があったばかりで、その家族も銃器の所持に責任があるとして拘留されたタイミングが非難の輪をひろげた。

 

この聖家族の画をみて連想したのは、ワシらのもてなし記事で紹介したHatfield-McCoy家の抗争だった。ケンタッキーのマッコイ家とウエストヴァージニアのハットフィールド家は密造酒業者で、南北戦争後に川をはさんで対立し殺し合いをかさねてきた。

 

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Hatfield家

 

マッスィー議員は、ウエストヴァージニア・ハンティントンで生まれケンタッキー・ヴァンスバーグで育った。現住所はケンタッキー・ギャリソンでどちらもオハイオ川沿いの近隣にあり、父親はビール製造業者だった。

 

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濃色の部分がハットフィールド・マッコイの抗争舞台で、上に流れるのがオハイオ川だ。ハンティントンの名が見え、ギャリソンは左上の南岸にあたる。地図上方150km北にはこれも銃撃事件で知られたオハイオ州コロンバスがあり、西250kmにはモハメド・アリの出身地ルイヴィルがある。

 

これだけならアーンドラ・プラデーシュ州のラーヤラスィーマのような風土を思い浮かべるところだが、マッスィー議員の背景はもう少し複雑だ。

議員はマサチューセッツ工科大学で工学を修め、ソーラーカーの開発を経て起業している。のちに政治に進み2012年に議員当選した。

 

政治信条はリバータリアンだと称し、共和党内でもちょっと変わった位置にある。ティーパーティーのような極右とも協力関係にあったが、アメリカの対外干渉や戦争行為には反対してきた。大きな政府に通じる法案にも否定的だった。この点ではリバータリアンクリント・イーストウッドに似ている。イーストウッドは現在銃器規制の立場だが、マッスィーは見てのとおりだ。昨年のケノーシャ銃撃事件では、被告を擁護している。クリントは国際スターとしての自分の立ち位置を理解しているカリフォルニア人だが、マッスィーはハイテク装備の古代人で自分の選挙民だけ見ているのだろう。

しかしアメリカは近代への途上にあるのではなく、れっきとした現代の帝国だ。嫌悪感はそこから生じる、

 

気のきいた風刺画家がこの構図で、民主主義サミットとかマンガ化したらいいと思う。7人いるからセブンはどうだろう。内乱の予感でもいい。この人たちは病気だ。