李賽鳳が蜀山に出演したときはまだ高校生で、学校が終わってから撮影所に向かった。ヘアメイクに夜通しかかり、それからワイヤーに吊られっぱなしで朝になるとまた授業に出るので眠くてしかたなかったという。
林青霞の髪型はもっと複雑で、結髪は一日がかりだったとのことだ。きつく結うので林青霞は頭痛がひどく、呻いたりときどきキレそうになっていたという。李賽鳳には優しく、自身も学生時代から演技をしていたので学校のことなどが話題になった。
林青霞の学生時代。
元彪によれば撮影は李賽鳳、孟海、元彪の三人組が一番長く1年がかりだったという。筋はあってないような蜀山だが、たしかにこの三人の物語といえなくもない。
他の主役は多忙で、八日から十日で撮影を済ませていたという。
しかし結局映画を支配したのは新人たちでなく、仙女そのものとなった林青霞であり剣侠と血魔を演じ分けた鄭少秋の存在感だった。
仙女の夏光莉は劉松仁といい感じになる。
血魔打倒策を授けるジュディ・オング。
メイクしていても馮克安だとわかる。
蜀山の魅力の本質は香港映画の伝統を受け継いだ張叔平の美術の腕であり、ワイヤーワークに新地平を開いた元奎の動作設計だった。youtubeやTikTokで見られる中国人の職人技などを見ると、こういう器用で勤勉な人たちが現世で成功しないわけがないと思わされる。
林青霞の古装片での君臨、程小東の倩女幽魂(チャイニーズ・ゴーストストーリー)のような香港ファンタジーの新時代はこの映画から拓けている。さらにいえばマトリックスのようなワイヤーフーの源流もここにある。
布を活用した香港映画独特の特撮。
短い映像集