無敵鴛鴦腿 (1988) 全編
宗巧珍と王群が主演した无敌鸳鸯腿は、70年代低予算港台功夫映画を大陸製作陣で再現したような作品だ。それぞれの親を殺された男女が互いに鍛え、仇を討つ気楽な娯楽作になっている。
本家ではもう作られなくなっていた作風だが、あちらでは登場しない潮州の椰子の砂浜での復讐劇が珍しい。お金も不相応にかかっていて、カポックの燈籠、石垣、仏像がおしげもなく壊される。三階からの墜落スタントも何回落ちるんだというくらいふんだんにあって、このころ両岸三地の技術水準は等しくなったようだ。
宗巧珍は江蘇省武術隊員だけあって技は流麗で、六連続蹴りなどを見せるが力感には欠ける。王群は李連杰の大師兄とのことで、四連回し蹴りに迫力がある。眼力も強くて、香港でも活躍できただろう。映画ドラマで長く活動した。悪役の王赤も悪くていい。
無敵鴛鴦腿は1994年に、邪僧の名で香港映画として再発行されている。中身は同じだが香港監督になっていて高城富士美の名もあるので、再編集されたのかもしれない。
舞台の汕頭は昔から貿易港として栄え、現在は経済ハブとなっている。中国の椰子は広東省島嶼部と海南省に自生している。往時をしのぶすべもないが、近年、汕頭市内にも植樹されているとのことだ。
この話は鸳鸯铁履桃という潮州の民間説話がもとになっていて、話は清代だが映画は1930年代に置き換えられている。男女の仇討ちだからオシドリだが、鴛鴦腿を学んだといっても特に連係技があるわけではない。袁小田の出る将棋拳という映画では駒の動きをまねた技があったが、どう見ても二人掛りだから強いだけだった。
二人で手をつないで砂浜を歩くと、敵を殺せ正義を守れとぶっそうな歌が流れる。
一代槍王 (1989) 全編
一代枪王で宗巧珍と王群はまたペアを組んでいる。こちらは義和団の乱の史実をもとにした歴史大作だ。衣装は義和団の娘子軍である紅灯照のもので、宗巧珍はその兵士を演じている。
王群は槍王と呼ばれる槍の達人だが、義和団の武装を伝統的なものから銃砲に変えることを訴える。反清滅洋の団の戦略も、扶清滅洋に転換しようとして裏切りあつかいされ内部闘争がはじまる。王群暗殺を命じられた宗巧珍は、変装して機会をうかがいつきまとう。
義和団の歴史的詳細はまだ不明の部分が多くさまざまな派の連合とされるが、天地会とちがって反清だったことはないようだ。敗北後に掃清を掲げるようになり辛亥革命につながっていく。
一部に銃器で装備した部隊がいたことは史実とされる。梅花椿で知られる梅花拳のグループが最初に義和団を名乗ったとはいえ、組織は諸階層諸派の連合団体だった。
王群はドイツ公館から銃を盗み出し、克林德の名で知られるドイツ外交官ケットラーとの確執が生まれる。映画の終盤では、王群は槍でなく現代の枪(銃)で部隊を率いて戦う。80年代の功夫映画流行も終末をむかえる。
この作品には実在の人物が多数登場する。克林德もそうだが、西太后や紅灯照首領の林黒児、娼伎の賽金花など女性陣は80年代になって復活活躍をはじめた女優たちが演じている。林黒児役は功夫片に出演の多かった昆劇刀馬旦の楊鳳一だ。
百度の宗巧珍では南拳王 (1984) の記録しかないが、生死飞龙壁という詳細不明の作品にも名がある。