高鴻萍

八百羅漢 (1985) 全編

 

高鴻萍山東武術隊出身で、大陸武打星のなかでも動きの切れはいい。眼に力がある。それでも作品に恵まれたとはいえない。

 

八百羅漢は意欲作で、金と宋が覇権を争っていた時代を舞台にしている。下級僧を差別し奴隷としてこき使っている報国寺は、金に対しては戒律を口実にひたすら恭順していた。奴隷僧の劉振嶺は腕が立つが、金に抵抗するとかえって高僧たちから過酷な懲罰を受けていた。寺があまりにクソなので、暗黒描写がつづくとストレスがたまる。

 

高鴻萍はレジスタンスの一員で、男装して戦っている。硝石掘りをなりわいとする李家村が攻防の舞台となり、そこで寺から脱出した劉振嶺と出会う。村のセットや、大量動員された兵の衝突場面はスケールが大きい。全国の武術隊員を集めたらしい。

 

 

奴隷僧には鳥や猿をあやつる能力があって、高鴻萍が危機におちいったさいには動物を使って金兵を追い払う。つかの間の平和なとき、高鴻萍は自分が女であることを明かす。

 

監督の王星磊は山東省出身で、香港に渡り映画製作を学んだ。譚道良の潮州怒漢などを手がけている。ヒッチコックにあこがれて、鳥の襲撃場面を撮影したという。

 

金が本格的な攻勢をかけ、大量の犠牲者をだした村民たちは寺に避難する。硝石が目当ての金軍は村民の身柄をもとめ、寺は自己保身のため人々を差し出そうとする。最後の決戦がはじまる。

 

 

 

銅頭鉄羅漢 (1989) 全編

 

石頭の武僧が主人公で、釈源真経という秘伝書をめぐる争奪が描かれる。かなり喜劇的な作品で、高鴻萍は真経をねらうまぬけな双侠のかたわれを演じている。民国初頭の話なのに古装の武侠だし、悪のサムライもいて頭がモヒカンだ。

 

 

陳永霞の呂四娘シリーズにも出ているが、これは主役の美人顔を見せる作品で払子をふるうと岩が砕ける式の功夫映画だ。高鴻萍は妹役。

陳永霞は二十数作品に主演しているので、80年代の武術界あがりではもっとも成功しているようだ。

 

 

 

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悪報 (1989)

 

高鴻萍は、高紅萍の名でこの電視劇に出演している。斉魯音像出版社が発行人となっていて、おそらく山東電視台のドラマをVHSで出したのだろう。斉も魯も春秋戦国時代山東省にあった国名。

高鴻萍と張紅の姉妹が、おたがいを知らぬまま親の仇を討つ物語が上下集で展開される。主人公は男装している。

全体に安手だが、このドラマでも冒頭に女性の乳首が映っている。画質や主題歌の調子が白蓮艶事に似ていて、四川山東を問わず80年代末期の表現スタイルなのだろう。up主は白蓮艶事とおなじAsia VHS 绝版录像带全球首映で、中国乳首ドラマを蒐集しているようだ。

 

 

高鴻萍はのちに貿易に従事し、90年代末にサラエヴォに移住して中華レストランを開いた。香港制作の移民ドキュメンタリーにも登場する。

 

高鴻萍 HKMDb

 

 

年内はこれで休止。エルピスは凡庸なエンドで書くこともない。