龍虎武師


「カンフースタントマン 龍虎武師」は館数も少なくはやばやと打ち切りかと思っていたら、しぶとく上映がつづいている。実際、その価値のあるよくできたドキュメンタリーで、香港スタントマン武師の歴史を描いたものだ。

中国製作で、監督の魏君子は「いつか、また 後会無期」などにたずさわった製作畑の若い人だ。初監督だが、子供のころから無類の香港功夫映画オタクで著書をいくつも出している。この映画を作るために、みずから会社まで興してしまった。

中国向け映画だから、北京留学経験のある甄子丹は香港をシャンガンと発音している。

 

目配りは公正で情報量が圧倒的に多く、一度観ただけでは頭に納まりきらないだけの中身がある。戦時中、袁小田が香港にやってきたところから説き起こし、李小龍による画期をへて結尾は特別な人でしめくくられている。

洪家班、成家班、劉家班、袁家班を軸にまんべんなく歴史が描かれるが、視点は洪家班におかれている。

 

上映中だから内容には立ち入らない。香港影庫の出演者リストを見るだけで、知った名には胸が躍り知らない名には欠けたパズルのピースを探しあてた喜びがわいてくる。

たとえば

魚頭雲。元祖タンメンの人だが、生き残っていただけでなく2019年に香港電影金像獎專業精神獎を授与されていた。

 

 

ひとつだけ触れておきたいのは、冒頭画像に掲げた洪金宝監督のファースト・ミッション龍的心(1985)での墜落場面だ。

これはまったくワイヤーなしの鬼畜スタントだった。下にはダンボール箱を積み重ね、その上にマットを敷いただけだ。落ちることに技術はいらないが受け身を取れず頭からなら死亡、脚や尻から着地すれば半身不随となるだろう。よくこんなことをやらせ、やったと思う。 

 

7階から飛び降りた面々は、銭嘉楽の回想によれば、本人、元華、元徳、元武、咖哩、二宝、阿虎、小鵬の8人だったという。なんで元華がと思ったが、まだこのころはマスクをかぶってキョンシーをやっていた無名時代だ。

 

Yuen Tak

元徳は惠英紅の古くからの友人で、五郎八卦棍で共演している。

 

Yuen Miu

元武はこのドキュメンタリーでも、いろいろとむちゃなスタントをしている。

 

咖哩(劉秋生)は、龍的心では武師としてのみ名がある。

 

二宝はおそらく秦貴寶で、阿虎は蕭德虎のことだろう。小鵬はちょっとわからない。