鬼畜

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赤色大風暴(1990 別名:平凡英雄)で李賽鳳の幼い娘が誘拐される。その手口というのが、髪をつかんで車外に吊るしたまま連れ去るという荒っぽいものだ。映画は人権と児童福祉を置き去りにして、延々と娘は市中を引きずり回される。
よくこんな場面を撮影したと思うが、釈明によれば車窓から突き出た腕は鉄棒に服をかぶせたもので、子供は装具で固定されている。撮影速度も調整している、足が見えない場面では下に台がある、子役の恐怖の表情は演技だ、などと安全性を強調しているが、万が一ということがあるから普通こんな場面は撮らない。撮ろうと思う発想自体が鬼畜だ。

 

子役の名は陳卓欣で、1989年には周潤發主演の「伴我闖天涯」(いつの日かこの愛を)で台湾金馬奬助演賞に提名されているプロだ。

 

ひるがえって、現在ならここはCGを使うだろう。矛盾するようだが、CGと実写の合成画面には共感しにくい。Practicalでない映像は背後の労苦が見えない。あるのは椅子とモニターとキーボードだ。
完成度も高く壮観ではあっても、人間生活や労働と重ならず相互作用のない「ただ見るだけ」の画には惹かれない。これは旧人の言い草か。