くるり 第三話

 

生見の主人公は、24才で自分をさがしている。痛い人間の領域にさしかかっている年ごろであっても、記憶喪失なので許される。実物の生見は22才でアメリカの首都をフランスと答えるような痛い人間だが、台詞をおぼえられるし他の人格になれる能力がある。つまり演技ができる。頭がよくて知識のある人間で、気取りがあって擬装ができない演者はよく見かける。

 

生見は会社を辞めて指輪製作の工房に弟子入りし、とても不器用な自分を発見することになる。鈍感な人間でもあって、男たちの視線の意味になかなか気づかない。もとは無難な服を着て無難な態度で社会を乗り切っていたらしいが、すでにその記憶はない。ひとつずつ自分を再構築しているところで、無垢な存在だということでもある。この人物像に、生見はよくはまっている。

 

男たちは表情がことごとく意味ありげで、面倒な人間たちだ。ミステリー仕立てのせいもあるが、脚本家が女性だからかもしれない。小芝風花波よ聞いてくれでは女たちがみな曲がりくねって面倒な性格で、原作者は男性だった。これを思うと、男と女は面倒な関係にあるといえる。

 

恋人の物らしい指輪が、生見の身元を明らかにする手がかりになっている。登場した男の指にみなあてはまるので、よけいに謎は深まる。このドラマは、逆シンデレラ物語でもある。