ひどいタイトルだが、公式がそうなっているのだからしょうがない。
作家で教授の佐野史郎が絞殺され、別件逮捕された塩野瑛久は麻生久美子の弁護で釈放された。葬儀におもむいたふたりだったが、斎場で親戚が塩野にキムチチゲをぶちまける。しかしそれを麻生がかばったので、チゲだらけになってしまった。
トイレで体を拭いているところに塩野が進入してきて、自分のシャツを差し出す。麻生がTシャツのほうを所望したので、塩野は裸になる。
そしてそのままふたりは唇をかさね、さらに個室に入ってそれ以上の行為におよんだのだった。だから愛欲のキムチチゲ。
チゲをふるまう葬儀場などないだろうし、それをぶっかける親戚もいないだろう。このドラマは日韓合作で、監督とプロットライターが韓国側になっている。それだけでなく最初から韓国視聴者向けの作りで、向こうの資本が投下されているようだ。昨今の経済条件なら、日本のほうが制作が安いとかあるのかもしれない。
韓流らしいハードな描写だ。恋は闇も設定は似かよっているのだが、日本ドラマらしいフロッピーなふわふわした出来だ。
塩野はめずらしい一重で、色目になると二重があらわれてくる。
第二話を視て、ポン・ジュノのパラサイトみたいな話かと思った。階級社会の怨念みたいなことを描きたいのかと。
何が魔物マムルなのか考えると、階級差からくる復讐感情を指しているのかもしれない。しかし塩野はフェンシングコーチで妻もいて、ささやかな小市民生活を送っている。少年時代は極度の貧困だったが、教授夫妻に拾われ豪邸の離れを提供されている。合法的な寄宿で、立場をあやうくする犯行とはすぐには結びつかない。
教授はやり手実業家の妻に頭があがらず、ぐちぐちいっている嫌なやつだった。おまけに塩野妻の北香那に色目をつかっていた。やり手の教授妻は、愛されたいのにひがみっぽい夫に拒まれ絶望していた。夫婦の息子は塩野の学友で、母親の圧力でフェンシング大会の優勝を塩野から譲られていた。そんな環境だから、いつのまにか野良息子になって父とも不仲だった。つまり教授は、誰から殺されても不思議ではない家庭事情だった。
麻生は優秀な弁護士だが、男社会で抑圧感情をためていた。何よりおそらく四十代で野性の最後の呼び声に動かされ、情欲の炎を燃やしていた。そこに庇護者として塩野があらわれた。
塩野はそんな麻生のあがきを見て取り、獲物をねらう狩人のように機会をうかがっていた。自身の妻もふくめ、女を操作し支配する属性が身についているのだろう。妻を教授の餌にして、パラサイトをつづける算段もあったのではないか。しかし教授は一線を越えようとした。北香那も学生時代から塩野と因縁があり、もっと深い共犯関係のようなものがあるようにみえる。
だから魔物というタイトルは特定のだれかでなく、登場人物すべてがかかえていた心魔に思える。それがひとつの殺人であぶり出されてきたということか。
まだ二話だから、この先もっとハードな事件が起きるのかもしれないが。