初のパシュトー映画

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Yousuf Khan Sher Bano (1969 pakistan) ポスター

 

ユースフ・ハーンとシェール・バーノーは、パシュトゥーンの実際にあった恋愛譚にもとづいているといわれる。カラーチーで製作された同作品は初のパシュトー映画として大ヒットし、ウルドゥ、パンジャービーとならぶ今日までつづく道をきりひらいた。

時代はムガルのアクバルのころで、舞台は現パーキスターンのハイバル・パクトンクワ州 Swabi だという。この民話は1960年代にパシュトゥーン詩人の Ali Haider Joshi によって出版され、のちに仏訳英訳もおこなわれた。

 

映画はそこからさらに脚色されている。撮影は物語の現地の山河を背景におこなわれた。音楽もパシュトー音楽を再現し Khuda Gawa を連想させる。

幼いころ父を殺され母と妹の3人で暮らしていたユースフは、いつも長銃を手に狩りをしていた。そこで隣村のシェール・バーノーと出会い、たがいにひかれあうが思いは伝えられぬままだった。仲をとりもとうとする妹を叩いたりもした。

ある日、父方の従兄弟と狩りにでたユースフは射止めた鹿をひきあげようとロープで崖を降りるが、従兄弟たちはそれを切ってしまう。墜落して枝にひっかかったユースフは、急を知ってかけつけたシェール・バーノーの腕の中に落ちて助かる。

二人の仲は成就して婚礼のその最中、ユースフは従兄弟たちに復讐にでかけ卑怯な手で返り討ちにあう。絶望して放浪の途についたユースフは砂漠で行き倒れたところを助けられ、そこの村人たちに気に入られる。地元の賊を退治して土地の領主にもみとめられ、その家臣としてはたらくことになる。

しかし悪い従兄弟たちが勝手にシェール・バーノーの婚約をたくらんだことを聞き、部下の兵たちをつれて故郷の村に急ぐ。婚礼の場にまにあったユースフは従兄弟たちに報復し、シェール・バーノーと真に結ばれる。

しかしこれで話は終わらず、新婚まもないユースフは狩りに出て突風にあおられ崖から落ちる。捜索にいったシェール・バーノーは夫の死の場で息絶える。

 

パシュトゥーンの民話のなかで、父方の従兄弟というのは財産がらみで悪事をはたらくことになっているらしい。ユースフ殺害のたくらみやユースフの父が殺されたのもそれに絡んでいるようだが、あまりよくわからない。旧約のヨセフの話にも似ている。

背景の風土や家庭内の細部の描写、馬の疾走感など画質の悪さを引いても撮影はすばらしい。女は粉をひく、機を織る、糸をつむぐなどいつもはたらいているが、男は銃を手につるんでいるだけで最後のほうでユースフが二頭の牛を使って畑をたがやしているのでやっと農民なのだとわかる。制約はありながらも女ははっきり物をいうし、男の連れにはユースフにも従兄弟にもかならず情けない相棒がついてまわる。

これが芸術映画にならなかったのは、情けない相棒たちのベタな喜劇がふんだんにあるからだ。ウッドペッカーをまねた鳴き声を立てたりうっとうしいが、そこでかろうじて現代にリンクしているともいえる。

 

主演のバダール・ムニール Badar Munir はスワートの生まれで、この作品でパンジャーブのスルターン・ラーヒーにひとしい不動の地位を手に入れた。ムッサラト・シャヒーンとの共演も多い。映画人生は長いが、後年は「ヘロイン成金がパシュトー映画界に参入して製作が下品になった」として映画界から遠のいた。いまのパシュトー映画は家族で観られないとの声もコメント欄で目についた。ヒロインのヤースミーン・ハーンはやはりパシュトゥ-ンで、この作品がデビューだった。

 

 Yousuf Khan Sher Bano は Qissa あるいは Dastan と呼ばれる語り物として人気がたかい。

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Pashto New Badala Tapey 2015 Yousaf Khan Ao Sherbano TVでの実演
Qissa Da Yousuf Khan Sher Bano 野外での実演
物語解説記事 サルマン・ラシュディーではない

TVドラマ Yousaf Khan Sherbano

 Yousaf Khan Sherbano 600 years old love story and Grave's 二人の墓の案内

 

 

Yousuf Khan Sher Bano pakistan Film Magazine

Yusuf Khan and Sherbano  (wiki物語解説)