マージューン

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30代、放浪生活を終えてカーブルの君主になったムガル初代バーブルは、ワインに耽溺する安逸な生活をおくっていた。アフガーニスターンは紀元前からのワインの名産地で、バーブルは各所の酒の品定めをしている。

ワインと同時にマージューンというドラッグも服用していた。これはマジュヌーンのように人を狂わせるものとはじめは思ったが、Majoon معجون は練り物 ajoon عجين の語頭にmが付いたもので、crazy مجنون とは別のことばだった。だから練り歯磨きはマージューン・アスナーンになる。

 

マージューンは食べるもので大麻団子 Bhang goli のようでもあるが、バーブル時代の麻薬成分の主体はアヘンだった。中毒性はなかったらしく、常用していたわけではない。ワインのほうは飲みつづけていて、依存症に思える。

配下のベグたちとの宴会では、ワインとマージューンが一緒に供された。ただワインや蒸留酒ラクとマージューンとの酔いかたは異なっていて、両者を併用するパーティーはあまりうまくいかないとバーブルは書いている。アッパー系とダウナー系のちがいだろうか。

 

今日のイランでは、マージューンはトルコアイスのような練ったデザートで薬物は入っていない。

エジプトのマージューンには大麻、アヘン、朝鮮アサガオなどが使われ強力な効用が予想される。

東インドやパーキスターンで精力剤としてマージューンは継承されていて、マージューン・ムガルの宝石などが販売されている。

バーブルがこちら方面の効能を期待していたのか、バーブル・ナーマには記述がない。

 

40代になってヒンドゥスターンに侵攻した際、ラージプート勢力との決戦をまえにバーブルは禁酒の誓いを立てた。常習飲酒者でも、イスラームにそむくものとしての認識はあったようだ。聖戦を鼓舞することで、陣営の士気を高め勝利につながった。

それでもマージューンの服用はつづけ、短命の原因だったかもしれない。「健康のために」水銀を飲んだりもしていた。

 

おまけ

bhang ke nashe

大麻団子で飛んだマードゥリーと子供たち