雲南孔雀舞は、雲南白族出身の楊麗萍の踊りで全国的に知られるようになった。中央アジア風味が強いのが目を引いたのだった。しかし専業舞踏家であるから、振付も創作なのではないかと思った。
それで現地の実際を知りたくて傣族孔雀舞——《中国影像方志》を見ると、むしろ天竺、ジャワ、東南アジアの風格をもつものだった。
伝承人は雲南省徳宏傣族景頗族自治州瑞麗市の劇団に所属している。
元来、孔雀舞は仮面や装身具をつけて男だけに伝承されて踊るものだと映像では語られる。それを徒手孔雀舞として簡便にしたものが現代の演目だ。
衣装なしであらわになる三彎道と呼ぶ体を三点で曲げる所作は、天竺古典舞踊の共通ポーズであるトリバンギtribhangiに似ている。
仮面と装身具を用いた本来の舞を見せるのが、傣族孔雀舞—西双版納だ。
シーサンパンナ・タイ族自治州は瑞麗市から数百km離れているが、仮面や羽根の基本はおなじといえる。
だから孔雀舞は中央アジア由来というより、海上ルートがもたらしたものと考えるほうがいいだろう。