岸井ゆきの

 

パンドラの果実第三話は、セットから出て野に放たれた撮影だった。そうなるとどうしても、地味な「トリック」に見えてくる。ロケ地もどこかで見た吊り橋だし。

ただしあちらは怪現象に合理的な解決をつけるが、パンドラは今回で空想科学怪奇ドラマとして着地した。未知の物質を謎解きに使うなら、なんでもありになる。三人組のまとまりは、今まででいちばんよかった。

「トリック」はおふざけと後味の悪さが目玉で、こちらはまじめに人情ファンタジーをやっていて性格も異なる。ただパンドラ主人公の捜査官は、冷凍死体に毎日話かける本物のあぶない人間で今後どうなるか。岸井は天才博士というより、常識人として主人公にブレーキをかけている。

 

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今回見ていて岸井は奈良美智の描く女の子に似ていると思ったが、もう何年も前からいわれていることだった。

 

 

岸井と浜辺美波で、谷崎潤一郎の「卍」を製作しないだろうか。浜辺は最近の新聞インタヴューで、「白い薔薇の淵まで」という女子恋愛の小説を記者にすすめていた。奔放な若い作家と年上女性の恋で、関心領域のようだ。

卍は芦屋のいとはんと夙川マダムの愛欲を、若尾文子岸田今日子がかつて演じた。高い演技力が必要な原作だが、岸井なら十分こなせる。ただ撮れる監督が思いつかない。