冒頭では海外の表情キャプチャーアプリの開発者と手を組んで、新ゲームを模索する動きがあった。
しかしオダギリの会社が強大な投資ファンドに乗っ取られそうになり、特許を返す条件で岸井たちに助けを求める展開になった。ドラゴンボールでたとえられるような同工異曲だ。あちらは連載をいたずらに延ばすためのインフレだが、10話かそこらのシリーズでそれをやるのは企画の貧しさを物語る。
イケメン制作者のひとりはオダギリに協力することとなり、ひとりは渡航を選びアトムのゲーム開発チームは解体した。ふたりが袂を分かって別れる場面は韓流ドラマの恋人たちのようで、このドラマの需要がどこにあるかわかる。アトムはただの町工場にもどり、岸井たちはとり残された。
この先逆転があるとしたらゲームに顔認証をとりいれるアイデアを発展させて人工関節の特許とむすびつけ、アトムの名にふさわしい人型ロボットを作る流れだろう。予算的に無理だとは思うけれど。
人型ロボット技術は日進月歩で、最新の英国のAmecaは不気味の谷をこえたようだ。イーロン・マスクは見て「ウゲー」とかいったらしいが。
しかしひとつまえの動く蝋人形のようなMesmerシリーズにくらべると、病んだかんじはしない。
顔面データは宝の山で、ロシアのロボット制作会社は20万ドルの値段で使用権を買う公募をして2万件の申請がありすぐさま目標を達した。
身体機能の開発最先端であるBoston Dynamicsは、かなり人間の動きに近づいている。走るより膝を曲げず歩くほうがむずかしいだろう。HONDAのアシモは今年の3月に実演展示をやめてしまった。
踊るBoston Dynamicsロボ。
生物型ロボット開発は犬が主流だが、ここでは中国が最先端に追いついている。
エルピス
今回は岡部たかしの演技で乗り切った。
おもしろいのだが事件の究明はすすまず、ツインピークスみたいだ。宙ぶらりんになった謎を明かしていく話は、途中はよいが最後になんだこれはとなることが多い。このドラマはそんなことはないと思うが。
渡辺あや作品は、性愛がカギになっているのではないかと思う。ジョゼと虎と魚たちも考えてみれば渡辺の脚本で、足の不自由な池脇千鶴がヤリチンの妻夫木との関係を通過してより広い自由を手に入れる話だった。
火の魚で老作家の原田芳雄が「タバコ吸いてー」とさけぶのも、尾野真千子との交情を通じて性欲をとりもどしたことのNHK的表現だったと思っている。
エルピスで長澤が権力と通じた男を切れないのは性愛でむすびついているからで、民放的表現だとそこが描ききれない。だから長澤はなぜ未練を引きずるのかが伝わりにくい。
長澤はいうまでもないが、ゴードンも歌が上手いのを発見した。