中国のVloggerである楊さんはスイス留学中の人文地理学者だったが、学業を終えて帰郷するさいコロナでトラブルがつづいた。さらに正規にチケットを買っていると非常に高くつくので、それならと陸路でトルコからユーラシアを横断するアブラール・バーイーと同じ旅に出た。
それを帰国したのちVlogとしてupしながら、現在スクーターで中国各地を訪ねてまわっている。
そのなかで8月に、新疆タシュクルガンからワーハーン回廊に接近する回がある。もちろん越境はできないので、近寄れるかぎりの地点までということだ。
楊さんはタシュクルガンから南下して、ワーハーン回廊の対面にある蟠龍古道の近くまできた。
アブラール・バーイーは、左端下の湖のあるサルハドまでたどりついたところだ。赤印が蟠龍古道で、山越えして北東に進めばヤルカンド(莎車国)に行ける。
314号線上のどこまで行けたかはわからないが、村人はワーハーンまで200kmあるといっていたので蟠龍古道からそれほど離れたところではないのだろう。ここから先は牧民だけが進入することができる。道路沿いには、ワイヤーが張られている。
近くの食堂を営む村人はキルギス族で、他の村にはタージーク族もいるという。
またしばらく走ったあと立ち寄った茶店の一家と仲良くなり、ワイヤーをくぐって牧草地に足を踏み入れた。花の咲く草原でしばらく遊んだあと、家にも招かれた。ここではミルクティーとナーンをふるまわれた。アフガーンでは緑茶が主流だ。ナーンはあちらと同じで固くて重そうだ。
平野部が広いからか、タシュクルガンはパミールの向こう側のような峻烈さはないのどかな地だ。
帰りは314号線を離れて、蟠龍古道を登った。同所は600以上のヘアピンターンのある、とんでもない坂道だ。しかし4000mを越える頂上でも楊さんは、チベットに比べれば楽だと語る。
赤印は大唐西域記の朅盤陀国石頭城。
平面図だとわからないが、このあたりは世界の屋根パミール高原と崑崙山脈が重なる壮絶な地形だ。
しかし古道を過ぎて山間の瓦恰郷に来れば、そこはもう緑豊かな農村だった。
三蔵法師は、タシュクルガンから山を越えてヤルカンドに至ったと推定されている。