パ中国境のフンジュラーブ峠を越えてパミール高原を北上すると、カシュガルにいたるカラコルムハイウェイ途上に石頭城址がある。赤印がそれで、ここは大唐西域記の朅盤陀国首府だった。現在はタシュクルガン・タジク自治県で、新疆のカシュガル地区に属している。
タジク族は東イーラーン系の民で、テュルク系のウイグル族とちがいインド・イラン語派のパミール語の一種を用いる。
朅盤陀国は西域記によれば「敬崇佛法。有伽藍十餘所,僧徒五百餘人」だったとある。そのころの人口は5千人ほどだから、仏教は隆盛といえる。高原の地でも古代交通の要所で、国力もあったのだろう。風習はホータンに似ているとされ、古ウイグル人がタリム盆地に進入する以前なので他のオアシス国家とおなじ東イーラーン系住民で構成されていたようだ。
維基 渴盤陀國
青が玄奘の帰路で、パミール高原の文字の横に朅盤陀国が記されている。この地図は大信寺HPにあるものだ。ワーハーン回廊からカシュガルに抜け、崑崙山脈北道を通って玉門関にたどりついている。
タシュクルガンに注目していたのは、テュルクの踊り子記事で紹介したガリヤー・イズマイロワのパミール高原の踊りからだった。偉大なムガル(1960)のPyar Kiya To Darna Kya振付の元ネタではないかと考えていた。
しかしパミール高原の新疆タジク族やタジキスターンの画像映像からは、映画にちなんでアナールカリー帽と呼ばれる羽根付帽子の踊りは見いだせなかった。ウイグル族やウズベキスターンの踊りにも似ているが、どちらもオアシスの民だ。
だがこの映像でタジク族少女によって歌われている花儿为什么这样红は、ガリヤー・イズマイロワのパミール高原の踊りの曲に似ているのではないかと思った。映像には石頭城址が現れる。
花儿为什么这样红は1963年の映画である冰山上的来客に使われたもので、タジク族民謡の古力碧塔をもとにしている。タジク族の青年がカーブル城の王女に恋してかなわず、パミール高原にもどっていく話だという。歌詞
このモンタージュの前半が花儿为什么这样红の曲だ。パミール高原警備隊のタジク族兵士が生き別れしたおさななじみに似たスパイに騙されるが、やがて本物と出会いスパイ網を破るミステリー仕立ての話だ。
ここでの結論はガリヤー・イズマイロワの使っている曲は古力碧塔で、パミール高原の踊りとはタジク族のものということになる。ここから偉大なムガルにいたるには、さらに羽根をさがして三段跳びが必要になる。
おまけ
今年のイードのタジク族の踊り
タジク族歌曲 麗しのレナ
羽根付帽だが、演者はウイグル族だ。