マーヤーバザール

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マハーバーラタ外伝のマーヤーバザール (1957) は老若男女が楽しめる幻想映画だが、ことに子供は食いしん坊のガトートカチャが結婚式のごちそうを一人でたいらげる場面に大喜びしただろう。

テルグ映画といっても撮影所はマドラスで、作品の重要な魅力である特撮やトリック撮影、編集の技術の高さが当時のタミル映画界の実力をしのばせる。

 

この vivaha bhojanambuで並べられたうまそうな料理はテルグwikiによれば

 

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ガーレ

 

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ブーレ

 

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アリセル

 

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ラッドゥル

 

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アッパダム

などだ。

 

歌は19世紀英国ミュージックホールのもので、1898年に初レコード化され1922年に笑う警官として大ヒットした。1936年のマーヤーバザールで採用され、57年版はそれを踏襲している。歌詞はスラビ劇場で使われていたものだという。

 

 

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タミル版も同時撮影され、S.V.ランガーラーオ、サーヴィトリ、NTR以外の配役はタミル独自だ。アビマニュはジェミニ・ガネーサンが演じている。サーヴィトリの役名はシャシレーカでなく、タミルでの名称 Vatsala ヴァトゥサラーだ。

 

 

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タミル映画では、1948年にMGRがアルジュナ役で出た Abhimanyu がある。前半はマーヤーバザールの話で、後半がクルクシェートラ戦争になる。脚本はカルナーニディで、後年の反バラモン運動の両巨頭が神話映画にかかわっているのもめずらしい。独立前は反英民族主義に軸足があったということか。

MGRもシヴァージ・ガネーサンと同じく巡回劇団の出身で、戦前はこのような芝居を演じていたのだろう。シヴァージは Parasakthi (1952) でドラヴィダ運動の発火点となりながら、神様と縁が切れなくて傍流だった。

 

 

マーヤーバザールは舞台でも演じられる。

 

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ハイダラーバード近郊の Appareddy guda 村でのマーヤーバザール芝居。ヤクシャガーナムの系統だろうか。Shashirekha parinayam はシャシレーカの結婚の意味で、マーヤーバザール本来の名前にあたる。

 

 

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これはクーチプーディの舞踊劇で、ヤクシャガーナムはクーチプーディ村から発祥している。同村はカンナダ・ヤクシャガーナの源流でもあるといわれる。

 

 

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これもヤクシャガーナム。ガトートカチャが化けたシャシレーカだろうか。女形のせいもあるが、所作が男っぽい。

 

 

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この極彩色の志村けんのようなアビマニュはカルナータカ州境テランガーナの村芝居で、ヤクシャガーナムにもいろいろ流派があるようだ。

 

 

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 こちらは上と衣装が似ているが、コメント欄がカンナダ語で州境かカルナータカに属する村なのだろう。女性が演じているのがヤクシャガーナムと異なるが、ヤクシャガーナともちがう。

Veer Abhimanyu のようなアビマニュ物語かもしれない。中盤がシャシレーカとのかけあい、前半後半はラクシュマナ・クマーラと母親バーヌマティと見た。

(場所はバンガロール北西の  Balagudda 村のようだ。)

 

 

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テルグの芝居だが、ちゃんとした劇場で演じている。ガトートカチャの変身したシャシレーカが、ドゥリョーダナのバカ息子ラクシュマナ・クマーラをいたぶる。 劇団の性格は不明。

同上

 

 

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 スラビ劇場のマーヤーバザール

 

 

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タミルの ハリカター唱者が Vatsala Kalyanam ヴァトゥサラーの結婚を語る。

マーヤーバザール芝居はパールスィー劇場までさかのぼれるが、このような語りも代々継承されてきたのだろう。