トゥルソワ怒る

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前世紀のインド映画では山場でかならず稲妻が走るので、おなじ映像を使いまわしているのではと思っていた。

 

こんなにぎすぎすしたオリンピックもなかったと思う。神のいない国別運動会はオリンピアードの精神とは無縁のものだから、現実を反映してこうなるのもしかたない。ゼウスもぶちぎれて、オリュンポスの山から雷電を投げつけたくなることだろう。

 

女子フィギュアで前人未到の、国際試合4回転5本を達成したのに勝てなかったトゥルソワが吠えたらしい。男子王者のネイサン・チェンだけが肩をならべることができる内容だ。

ワリエワが勝つとだれもが思い、しかしだれも当人に責任があるとは思わない罪科で追いつめられワリエワは敗北した。真っ黒な画面の記事を書きたくなったが、現場はもっと実際的だった。

カミラには戦うチャンスがあったのだし、だれよりもすぐれていることを示すことはできた。それを生かせなかったのは自分の心に負けたからで、自分以外のだれの責任でもない。逆境に同情し抱きしめることもできるだろうが、なんで戦わなかったのだと責めるのもありだ。どちらが本人のためになるのか、こちらにはわからない。

 

トゥルソワはチームへの逆風と無縁に、自分が勝つためにベストをつくした。それ以外、リンクのなかでやることはないからだ。しかし結果は無情だった。

トゥルソワのプログラムは、音楽振付ともにプログラムとはいえないようなものだ。4回転の飛行計画というべきだろう。それでもサーシャは偉業をなしとげ、しかしリンク外のフィギュア貴族たちはそれを評価しなかった。この恣意的なさじ加減が、選定侯たちの権力の源泉にほかならない。

トゥルソワの怒りを共有したい。そしてこの闘志こそ、サーシャにあって幼いカミラになかったものだ。