これは昨年の3月20日ノウルーズ前夜の買い出し映像で、今年の3月21日からの新年にはまだひと月ほどある。場所は西アジア最大ともいわれるテヘランのグランドバーザールから、景観が独特のImam Hossein squareあたりにかけてのそぞろ歩きだ。人混みがすごい。
マスク姿が目立つが、イランはきわめて少ない感染でコロナ禍を乗り切りつつある。今年の映像ではほぼマスクも必要としなくなったようだ。これにはグローバリゼーションからハブられてきた、自由民主人権を口実にした帝国主義列強の干渉をはねかえしてきた事情もあるだろう。
かといって制裁下でも物資は潤沢なようだ。なんといっても西アジアの地域大国で、長い繁栄の歴史をもつ底力がある。昨年はBRICSへの加盟を申請し、資源は豊富で鉄鋼生産も伸びている。
大晦日といっても特に名はないが、前夜祭としてはチャハールシャンベ・スーリー水曜祭がある。この日は火の上を跳び越す祝い事があり、これはクパラというスラヴの祭に似ている。
ノウルーズ前夜にはهفتسین ハフトスィーンと呼ばれる、頭文字がSではじまる新年飾り付けの縁起物を買うために街に出るのがならわしとなっている。
سبزه sabzeh (新芽)
سمنو samanu (プリン)
سنجد senjed (オリーヴの仲間)
سماق Somāq (ウルシの実)
سرکه serkeh (酢)
それとリンゴ(Seeb سیب)、ニンニク(Seer سیر)で七つになる。
他にもヒヤシンス、硬貨、時計、色付き卵、鏡、燭台、金魚、本なども迎春のお供えでバーザール映像のあちこちで見つけられるだろう。
ノウルーズは数千年の歴史をもつといわれる行事で、西アジア中央アジアで広く開かれる。イラン、アフガーニスターン、アーゼルバイジャーン、トゥルクメニスターン、キルギスターン、タジキスターン、ウズベキスターン、カザフスターン、アルバニアは国の祝日で、ロシア、ウクライナ、モンゴル、イラク、シリア、パーキスターン、インド、バングラデーシュ、トルコ、中国、北マケドニア、コソボ、パレスティナ、キプロスなど多くの国で祝われている。各地に分かれたクルドにとっては重要な祭りだ。
イランでは古代のジャムシード王جمشیدからはじまると伝えられてきた。ジャムシードはインドのヤマ閻魔にあたる神話的存在で、おそらくインド・イラン語話者たちが中央アジアに居たころからの起源をもち広まったものなのだろう。
昨年のイランのノウルーズは静穏だったが、9月のクルド女性の死をきっかけに各地で騒乱が起きた。今年はどのような新年となるだろう。