変女子(つづき)

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ミドリがGo Toで砂丘で遊んでいると足元に穴が開いて砂に吸いこまれてしまった。必死にはいあがると1920年になっていた。東京にもどったが身寄りがないので男三人の落合の下宿にもぐりこんだ。精神科医と化学者の兄弟と音楽家の従兄弟が住んでいた。自分は専門がないので飯炊き掃除裁縫をしながら詩を書こうと思った。とりあえずミドリはポン女に入った。その名で呼ぶとお嬢様ばかりの女学生たちは不思議がった。

いろいろなものがなかったが映画と電車はあった。音楽家と接吻してると武蔵野館に行こうと誘われた。音楽家は下宿の窓から靴を放り投げついでにミドリも投げ出された。中井駅から線路は高田馬場までしか通じてなかった。西武電車はミドリを乗せても新宿に降ろしてくれなかったので東中野から乗車した。武蔵野館ではチャップリンとナジモヴァとガルボを観た。別の日には落合の映画館で阪妻のチャンバラを観た。そこらはプロレタリア文学作家のたまり場でガラがわるくいつも絶叫上映だった。

自分も作家になろうと思って愛読していたラノベを参考にして書き出した。周囲や時代のことは胸ふさがることがあまりに多くて半径50メートルのことだけ描こうと思った。映画も参考にしてラノベに足りない詩を文章に盛りこんだ。タイトルは第七官界彷徨にした。

発表すると高く評価する人たちがあらわれた。生活には足りなかったのでバイトした。映画随筆も書いた。林芙美子や女性作家たちが家を訪れるようになり落合サロンと名づけた。

書いているからかタイムスリップの影響か頭痛がとまらなくなってきた。鎮痛剤を常用していると中毒症状が出てきた。幻覚が見えるようになった。暴れていると知らない男が故郷の精神病院に入れるといって連れて行こうとした。抵抗したが汽車に乗せられてしまった。「このまま死ぬのならむごい」とつぶやくと涙が出た。発車するとき横にいた見知らぬ乗客が「未来で読者が待っている。」と耳元でささやいて消えた。

 

(完・・じゃなくてまだつづく)

 

尾崎翠

落合文士村

西武鉄道

時かけの舞台になった中井

新宿武蔵野館

公楽キネマ

林芙美子

時をかける少女

 

 

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