人間との関係を円滑にしようとして、笑顔でひどいことをいう。
前回は笑うことをおぼえたが、今回は怒ることとウソをつくことを学んだ。
驚きは初期設定で組みこまれている。
「クビになりました。」と柄本に報告する。
今回は瀧本美織が進行役で総合診断協議チームを集めようとするが、浜辺のコミュニケーション能力欠如もあってなかなかうまくいかない。
魔物を倒すごとに手や足が再生する百鬼丸のように、浜辺は患者を救う過程で感情表現を獲得していく。
インド古代演劇のナヴァラサ理論によれば、人間感情は笑い、エロ、勇気、驚き、悲しみ、怒り、嫌悪、恐れに代表される。今後、悲しみやエロも身につけていくのだろうか。
浜辺の正体については医療ロボット、綾波のようなクローン、失踪した天才医師が性転換して還ってきたなどさまざまに推測されている。医療知識が人間ばなれしているからだ。
行方不明になったのは病院長の息子で、それいらい診療体制が崩壊し誤診が多発していた。埋めあわせるように浜辺が登場したので、なんらかのつながりがありそうだ。またもっと大きな、アンブレラ社のような黒幕の存在もほのめかされている。TVドラマのことだから、全部ただの釣りかもしれないが。
手塚治虫のような古い医学者は、人間機械論的に切ってつなげたら治るの思想があり世間はその腕前に拍手をおくる。しかし人体はもっと不思議な相互連関でできている。
超人的あるいは良心的医師がいようがいまいが、現代医学はあまりにも情報が蓄積されて専科の多い大病院ほど適切な診断が困難になっているのではないかと思う。
世の秀才医師たちは、よくあれほどの知識を身につけていると驚くしかない。そのすぐれた専門家たちがそれぞれ違うことをいうようになると、患者にとっては悲劇だ。これが崩壊した病院で、該当する大病院の例はいくつも思いあたるだろう。「お医者さんに従え」では済まない時代になっている。
浜辺の登場した病院はそのひとつだ。院長の石坂浩二は「患者の心によりそう医療ではもうだめなのではないか」と考えているため、超人的知識をもつ医療サイボーグに再建をたくす気になった。ただ知識だけで資格も実践的手腕もないから、各科の落ちこぼれを集めてチームを結成することになる。浜辺はその頭脳だが人間性はないから診断AIのようなもので、それがリーダーであるところがこのドラマの新味だ。
そのような人工知能による診断は、まだ人間に置き換えられるものにはなっていない。しかし普及すれば個々の人間の経験知やカンにたよる診察は、向上するかはともかく水平化されるだろうし機械学習も進化するだろう。誤診の責任はだれが取るか、利益追求のための知識の秘匿、自己治癒能力をひきだすのはだれかなど複雑な問題も発生するだろう。
将棋や囲碁で人間をしのいでしまったのだから、非人間的医療の勝利も遠いことではないはずだ。
ドクターホワイトは第二話で安定軌道に乗ったと思うが、浜辺が色気づいて豊富な性知識を活かしたラブコメになったりするおそれもある。
来週は子供たちが出てくるから、ヒューマンドラマになるかもしれない。このドラマは看護師も病人もいないが、子役はギャラが安そうだ。トリックの千里眼の男のように笑顔で「君は治らないんだよ」と告げて、モニター前を凍りつかせる展開はあるか。
成田凌の逃亡医は先週腕をぶった切られたばかりの森七菜が、雪山を助手のように同行する。
こちらも超人大行進だが、森は逃亡の孤独が生んだ成田のイマジナリフレンドかもしれない。