名古屋大須大道町人祭

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名古屋はアンケートによれば大都市でいちばん魅力がないそうだが、注目度の低さのおかげで大須のような奇妙な町がステルス状態で保存されたのは幸いなことだ。
大須といえば10月の大須大道町人祭であり、その代名詞ともいえるのが金粉ショウだ。

いまでこそ都内のあちこちで金粉ショウは行われるが、規模や舞台で大須にまさるところはない。
日本でいちばん長い商店街は大阪の天神橋筋、関東では戸越銀座らしい。しかし大須の特徴は商店街が東西南北に走り、路地もふくめて中華街を数倍化したような街区を形成しているところにある。エスニック屋台や激安スーパー、衣料をグラム売りする店もあれば腕のいいフレンチもある。盛り場の息苦しさのない、猥雑だが落ち着いた浅草といったところだろうか。そのブロックの4カ所がステージとなるのだ。

 

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まずは時間と関心のない人のために25秒版 40秒版 を紹介しておこう。
ごらんのように、身をおおうものは金粉とわずかな布だけだ。大駱駝艦 の文字が目に入る。これは舞踏集団の野外公演であり、76年に日本初の大道芸人祭りとして始まった町人祭に、いつとも知れぬ昔から参加している。200年前大須ラクダの見世物があったとの故事にちなむか、金ピカ好きの名古屋にあうのかもしれない。裸で町を縦横に踊りまわっている。

 

毎ステージは30分前後におよぶもので、長丁場でもあきることはない。ほんとはすべて見てもらうのがよいのだが、編集版から小出しにしよう。

2008 真福寺大須観音
大須にはいくつも寺が散在するが、ここがセンターといえる。最古の古事記写本があるのだが、名古屋を古都と呼ぶ人はいないだろう。境内裏には「グッモーエビアン」で三吉彩花とまだ無名の能年ちゃんがクレープを食べた店がある。世界に冠たる大須スケートリンクもすぐそばだ。

2008 大光院中庭
ここは女性(遊女)に人気があった寺だという。

2013 裏門前町通り
信長が「バカヤロー」といって位牌に灰を投げた万松寺の通りと交差している。

2010 ふれあい広場
ここは街の南東にあって、大きな招き猫が目印だ。

毎回メンバーもBGMもちがうのだが、おおまかな振付や火吹きなどの見せ場は同じだ。暗黒舞踏というより、さまざまなダンスの「手」や音楽がごたまぜになった、よく練られたショウが披露される。最初は若い子のオッパイや男の筋肉への興味から入ったにしても、なんだかそれ以上のものがある予感がしてくる。

真価が発揮されるのは完全版だ。最後が投げ銭でしめくくられるさまが見られるのもゆかしい。クリップはたくさんあるけれども、アマチュアだし、腕、撮影位置、機材、関心領域、さらには年度ごとのメンバーによって印象がみなちが い見あきない。
なかでも2012は大須400年記念にあたり、ダンサーが9人と大サービスだし撮影数も多い。

2012 ふれあい広場 

2012 大須観音
夜のショウが、いちばん見ごたえある。

2012 裏門前町通り 1 2 3  4
残念なことに分割編集版で画質も落ちる。

2012 大光院  
年令確認が必要だったり、音楽が差し替えられたものばかりになってしまった。

 

芸術といえば敬して遠ざけるのだけれど、修練を積んだ技術と身体をもったダンサーたちがこちらに降りて来て献身的に踊ってくれる。敬愛を返すしかない。
生身の肉体が金をまぶすことによっていったん抽象化され、さらに呪物としての性格を帯びている。動く金銅仏のようなありがたさがある。それでいてダンサーの肢体はとても自然に映る。男も女も裸であることで平等だからだ。 

 

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すると女性は少林十八銅女みたいだ。しかし匿名性に徹した男と違い、女性ダンサーは身体条件もひとりひとり異なっている。ずっと見てくると誰が声出し、つまり踊りのフォーメーションのきっかけ作りをしているかわかってくる。その人がいちばん上手いダンサーだろう。がぜん、踊り子の個性に興味が湧いてくる。ついで名を探り顔を見分け、両者が一致するようになればもう虜だ。

 

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地上のパラダイス、竜宮城の舞い踊りのような金粉ショウだが、じつは去年から女性は着衣するようになってしまった。真相はわからないのだが、ひそかに愛され続けたショウが近年、機材の発達でネット映像を通じて拡散し、目を付けたAV業者が無断でDVDを発売するまでにいたったことがいちばん大きいのではないかと思う。悪知恵の木の実を食らって恥を忘れた連中から、身を守ることを強いられているのだろう。
今年も10月15-16日に開催される大須大道町人祭が、楽園の防衛戦に勝つことを願っている。
また国外ではもっぱら欧州に紹介されている舞踏だが、印度、中国、韓国の舞台に登場する日は来るだろうか。この想像は楽しい。ジハーディストだとかなり気まずいが。

最後に完全版のできのよい撮影をまとめてみな挙げておこう。これが伝統の最後となるかもしれないから。
ふれあい広場 2014
大須観音2010 1  2 3 

 

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