ジャーヴァリ Javeli

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スラビ・カマラーバーイとクリシュナジョーティ

 

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 リンクする先が多い、拡張性が高い、情報量が豊富な踊りに惹かれる。この Javeli జావళి 映像がそうだ。反対にインドのどこにもつながらないものは、看過してしまう。

 これは1956年テルグ映画の Muddu Bidda での踊りだ。amtalone tellavare (朝早く) と題された曲で踊るのはクリシュナジョーティKrishnajyothi 、後朝の情感を演じている。

 

ジャーヴァリはパダムPadam と並び称されるカルナーティック音楽の恋歌で、より速くあからさまなものがジャーヴァリだという。

タミルだがハリニ・ジーヴィターラーダーの密会の踊りで、ジャヴァーリ ஜவாலி は紹介している。古式ゆかしいヴァルナムVarnam やパダムとちがっていそいそと軽快で明示的だ。The Hindu の記事はJaveliの起源を18世紀、さらには15世紀までさかのぼっている。官能の濃さでは12世紀ジャヤデーヴァのギーター・ゴーヴィンダーにたどりつくだろうし、太古からのインド世界の性表現に結びつく。

 

映画の場面は、マハーラーシュトラのタマーシャーの一座に似ている。客がクリシュナジョーティにエロが足りないと文句をいい、それにおうじてジャーヴァリに切り替えたのだろう。あとから来た客は子供に「ガキがこないなとこにおるな」と追い出そうとする。するとさらに周囲が「ええやないか」と引きとめる。

 

アーンドラプラデーシュといえばヤクシャガーナムの神様芝居がこのような一座としてはまず思いつくが、テルグにも世俗的なタマーシャーのようなものがあったのだろうか。それともたんなる映画の虚構かは、いまのところわからない。踊り子とムリダンガム、小シンバルをもった男女のnattuvanar、ヴァイオリンの編成はタマーシャーと重なるものがある。

 

このダンス映像のup主は、以前にも紹介した映画古典ダンスサイトを主宰している。このジャーヴァリについての記事もあり、歴史学者 Davesh Soneji の著作に準拠して Muddu Bidda の踊りを解説している。

Soneji によれば、寺院とつながったデーヴァダースィーとは区別されてカラーヴァントゥル కళావంతులు と呼ばれる世俗のダンス・グループがあったという。Kalavantuluは芸術家の意味だ。

また踊り子のクリシュナジョーティはカラーヴァントゥル・コミュニティー出身で、拍子取りナットゥヴァーナルの女性はスラビ劇団の Surabhi Kamalabai だという。

クリシュナジョーティは男優サーイ・クマールの母親で、 Muddu Bidda 出演後1960年に結婚し映画履歴はネットでは追えない。たぶん出産引退したのだろうが、2006年に亡くなっている。死亡記事でいくつかの出演作品と、短編小説作家としての活動があったことが記されている。

サーイ・クマールについては、川口でのカンナダ映画 RangiTaranga の上映記事がある。

 

Davesh Soneji は、Salon to Cinema: The Distinctly Modern Life of the Telugu Javali とpdfでカラーヴァントゥルについての小エッセーが読める。

 

クーチプーディとカラーヴァントゥルのこみいった関係など、問題は拡張していくので再度記事にしたい。