Dansöz トルコ・ベリーダンス映画

 

トルコ語でダンスゥズdansözは、ダンス一般でなくベリーダンスを指すようだ。

これは2001年の映画で本来は114分のものだが、ネットには検閲カットされた96分のものと英字幕付きの93分のものしかない。

 

冒頭、馬車で旅するいにしえのロマたちの姿からはじまり、字幕で「わたしを育てたロマたちに」と監督による献辞が示される。監督サヴァシュ・アイSavaş Ayはトークショーの人気司会者で、田原総一朗みたいなものか。

 

コブラの刺青を入れたダンサーが踊る場面に銃撃がかさなる。崩れ落ちるダンサーと足に被弾したダルブカDarbuka奏者。それから20年がたちダンサーは車椅子の大富豪となり、いまもコブラと呼ばれている。アルバニア人である太鼓叩きは、足の悪いただの酔っ払いだ。

監督が演じるかつてのダルブカ打ちは、ロマのベリーダンサーであるカナーリャが乱暴されるところを救う。ふたりは結婚式を挙げるまでにいたるが、カットが多く流れがつかみにくい。

コブラの反抗的な娘もベリーダンスを習っている。男みたいな声のネプチューンという名のコーチの訓練を受けている。ふたりのダンサーは旧世代の因縁を知らないまま、訓練をかさねコンテストで対決する。カナーリャは色黒とあざけられる。カナーリャ以外の出場者はロマでないようだ。

 

話はこれだけだが、一見すると同じロマ好きのクストリッツァ作品のようなものが作りたかったのではないかと思う。ただ出来上がりは、カットがあるとしてもアマチュア芸術家の産物というあたりだ。

 

ロマの集落の様子や主演がゾロと呼ばれる友人と卑語まじりでわちゃわちゃするあたりの雰囲気はいいのだが、全編を支配するにはいたらずメロドラマ展開で中断される。村と町の対比が上手くいっていない。

意味のわからない幻想的場面が流れをさえぎる。踊りや訓練、コンテストの場面もものたりない。つなぎがでたらめに感じるが、検閲のためだけでなくヌーヴェルヴァーグみたいに撮りたかったのではないか。80年代西欧B級映画と呼ぶ人もいた。

 

カット場面は言及されるかぎりではキリストの磔刑、肌の露出、暴行未遂のあたりらしい。キリストがなぜ出てくるのかはわからない。名のある役者が演じているようで、主要キャストやカメオも有名人らしい。

興行や批評はよくなかったようだが、無価値かというとどこか捨てがたいものも感じる。

 

ダンスはここではオリヤンタルダンスOryantal Dansと呼ばれている。ロマはロマンのようだ。

 

ステージやマスメディアに登場するベリーダンスにはあまり興味がもてないが、野外の結婚式にプロを呼ぶこともあるらしい。音楽は、アレイナたちの踊りとはずいぶんちがう。

 

カナーリャは、コンテストでDolapdere出身と紹介されている。イスタンブルのガラタ塔ちかくでロマ居住区らしいが、マップで見ても映画の集落にはほど遠いかんじだ。監督の幻想のなかのロマの村か。