テヘラン孤独の歌

テヘラン孤独の歌 英字幕付き

テヘランタワーが眺望できる山の手を歩くふたり。レオンとマチルダみたいでもある。

 

テヘランは大都会だから、資本が集中すると同時に底辺も吹き溜まる。テヘラン孤独の歌 (2007) ترانه تنهایی تهران は社会の下層で身を寄せ合うふたりの相棒の話だ。

特異な容貌のハミードと戦争神経症だというベールーズは、衛星放送のアンテナを設置する業者だ。といってもインチキ稼業でパラボラは足替わりでもある廃品回収業者から調達し、受信器やケーブルは他人のビルから盗み出している。

テヘラン底辺の三人組の構図は風紀警察ガシュト・エルシャードにも似ているが、軸はハミードとベールーズで「ハツカネズミと人間」までさかのぼれる奇妙なカップルだ。

ハミードを演じるハミード・ハビービファルは、早老症ウェルナー症候群の風貌だがすぐに熟練した役者だとわかる。演劇畑の人で何作も映画出演している。

 

ハミードは、いつもへまばかりしているベールーズに対して口やかましい。口八丁で営業もこなしている。しかし体が小さいから、大男のベールーズを頼りにもしている。住むところのないベールーズを自分の部屋に泊めているが、大家はアヘン中毒者の暴君で家賃も滞納しているため夜こっそりと家に帰る。

下町住まいのふたりの仕事先は山の手で、歩くのはいつも坂道だ。廃品回収業者のハッサンに送ってもらうこともあれば、徒歩も多い。ある日ひとり暮らしの優雅な女性が顧客になり、ふたりとものぼせあがってしまう。恋するたびに星型のキャンディー(ガラス?)をビンに入れるといって、ハミードはベールーズにそれを見せる。

 

こういうささやかな挿話のつみかさねを、凝った映像でつづる作品だ。都会の底辺という普遍を描いているかわりに、イラン色の薄い国際映画祭向きな普通の映画だともいえる。主演のふたりに吸引力がある。

 

Lonely Tunes of Tehran imdb

 

 

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ハミード主演短編 Alcohol free (2020) بدون الکل

 

Hamid Habibifar imdb

 ハミード・ハビービファルは、昨年暮れ心臓発作のため36才で亡くなった。(イラン暦1364年生)