イラン映画 邪魔しないで

邪魔しないで لطفا مزاحم نشوید (2010) 英字幕付

 

これはテヘランを舞台とする3つの挿話からなる喜劇で、第一話は妻を殴ったばかりの道徳番組司会者、第二話は財布をすられた聖職者、第三話は認知症の夫とこれも少々あやしい妻の話だ。

 

ポスターでは下だが、孤独な老夫婦が一番おかしい。ついで困り顔の聖職者で、司会者と妻の話はちょっと消化不良だった。

殴られた妻とその下の第三話に出てくる修理工はともに人気俳優らしいが、大きな役ではない。妻がほんの一瞬しか素顔を見せないあたり、演出の洒落を感じる。

 

イランで大ヒットし、釜山、ダマスカスの映画祭で評価されたのは、聖職者が社会的影響力をもつ国柄だからだろう。カトリックが強かった昔のイタリア映画みたいでもある。

第二話を見るとイランでは聖職者が自分で事務所を開き、結婚離婚がハラールかハラームかの判定を仕事としている。米国あたりでは裁判所に牧師がいるのではなかったか。

 

20世紀初、中国トルコイランで革命が起きたが、イランは袁世凱が皇帝のまま居座った世界線をたどってきた。それを覆した指導勢力が聖職者たちだったので、いまでも威信があるし社会に定着している。だから身分証をすられてあわてる姿はおかしいのだろうが、こちらには十分つたわりきらないのが残念なところだ。孤老の話は普遍的だから、不謹慎すれすれでも笑える。

 

لطفاً مزاحم نشوید