高手又見高手

f:id:moonleex:20210216223053j:plain

梁家仁          王龍威         高飛

 

識英雄重英雄(香港1980)での三人の死闘は、数ある功夫映画の闘いでも最高峰に属するだろう。一部吊身や雑技部分での替身は使っているが、傑出した運動家たちの衝突の重量感は本物だ。

振付は香港影庫だと宋金來、陳少龍になっている。しかしこの高度な構成の遂行は、三人の高手がいてこそといえる。

王龍威は剛柔流空手、高飛も空手、梁家仁は籠球出身と履歴にはある。背景はともかく、この三人の運動能力は群を抜いている。高飛の馬拳、梁家仁の龍拳は功夫片特有の幻想だが、これをさばけるのは王龍威の技術の確かさがあるからだ。

ジャーヴァリ Javeli

f:id:moonleex:20210212232547p:plain

スラビ・カマラーバーイとクリシュナジョーティ

 

www.youtube.com

 

 リンクする先が多い、拡張性が高い、情報量が豊富な踊りに惹かれる。この Javeli జావళి 映像がそうだ。反対にインドのどこにもつながらないものは、看過してしまう。

 これは1956年テルグ映画の Muddu Bidda での踊りだ。amtalone tellavare (朝早く) と題された曲で踊るのはクリシュナジョーティKrishnajyothi 、後朝の情感を演じている。

 

ジャーヴァリはパダムPadam と並び称されるカルナーティック音楽の恋歌で、より速くあからさまなものがジャーヴァリだという。

タミルだがハリニ・ジーヴィターラーダーの密会の踊りで、ジャヴァーリ ஜவாலி は紹介している。古式ゆかしいヴァルナムVarnam やパダムとちがっていそいそと軽快で明示的だ。The Hindu の記事はJaveliの起源を18世紀、さらには15世紀までさかのぼっている。官能の濃さでは12世紀ジャヤデーヴァのギーター・ゴーヴィンダーにたどりつくだろうし、太古からのインド世界の性表現に結びつく。

 

映画の場面は、マハーラーシュトラのタマーシャーの一座に似ている。客がクリシュナジョーティにエロが足りないと文句をいい、それにおうじてジャーヴァリに切り替えたのだろう。あとから来た客は子供に「ガキがこないなとこにおるな」と追い出そうとする。するとさらに周囲が「ええやないか」と引きとめる。

 

アーンドラプラデーシュといえばヤクシャガーナムの神様芝居がこのような一座としてはまず思いつくが、テルグにも世俗的なタマーシャーのようなものがあったのだろうか。それともたんなる映画の虚構かは、いまのところわからない。踊り子とムリダンガム、小シンバルをもった男女のnattuvanar、ヴァイオリンの編成はタマーシャーと重なるものがある。

 

このダンス映像のup主は、以前にも紹介した映画古典ダンスサイトを主宰している。このジャーヴァリについての記事もあり、歴史学者 Davesh Soneji の著作に準拠して Muddu Bidda の踊りを解説している。

Soneji によれば、寺院とつながったデーヴァダースィーとは区別されてカラーヴァントゥル కళావంతులు と呼ばれる世俗のダンス・グループがあったという。Kalavantuluは芸術家の意味だ。

また踊り子のクリシュナジョーティはカラーヴァントゥル・コミュニティー出身で、拍子取りナットゥヴァーナルの女性はスラビ劇団の Surabhi Kamalabai だという。

クリシュナジョーティは男優サーイ・クマールの母親で、 Muddu Bidda 出演後1960年に結婚し映画履歴はネットでは追えない。たぶん出産引退したのだろうが、2006年に亡くなっている。死亡記事でいくつかの出演作品と、短編小説作家としての活動があったことが記されている。

サーイ・クマールについては、川口でのカンナダ映画 RangiTaranga の上映記事がある。

 

Davesh Soneji は、Salon to Cinema: The Distinctly Modern Life of the Telugu Javali とpdfでカラーヴァントゥルについての小エッセーが読める。

 

クーチプーディとカラーヴァントゥルのこみいった関係など、問題は拡張していくので再度記事にしたい。

ラフマニノフ

f:id:moonleex:20210204224439p:plain

 

ラフマニノフはラフマーンではないかと思ったので調べてみた。アラビア語の慈悲深きものの意味で、アッラーの美称のひとつでもある。A.R.ラフマーンやワヒーダー・レヘマーンが、その名にちなんでいる。

 

ロシア語wikiには貴族の家系としかないが、同じくラフマニノフ姓にあたると奇怪なことにбрахманバラモンに由来するという。しかも古東スラブ語で怠惰な人の意で、ラフマニノフ家の始祖のあだ名だったとしている。

 

英wikiもその流れで、15世紀のモルダヴィア大公の娘とイヴァン三世の息子のあいだの子がRachmanin古スラブ語のlazyのニックネームをもっていたという。

 

百度百科の谢尔盖·瓦西里耶维奇·拉赫玛尼诺夫は拉赫曼尼は挥霍无度つまり放埓で、ラフマニノフの父親がまさにそうだったとする。

また一説で拉赫曼尼の意味に親切、慷慨もあげている。慈悲深きものに近い。

 

別の角度の切り口で、音楽家Piero Rattalinoによる伝記では、ラフマニノフ家の祖をタタールだとしている。ソースは示されていないが、日本語ウィキでもタタールだと書いている。そのような伝聞が底流にあるのだろう。

 

純ロシア人とかスラブ人がいるわけでなく、ロシアの成り立ちからいえばタタールを含めた諸族のごった煮がロシア人だ。タタールというのもモンゴルあるいはテュルク系イスラームの大雑把な呼称がタタールで、均一な実体はない。

 

イヴァン4世はカエサルとチンギス・ハンの継承者を自任していた。ローマ帝国ジョチ・ウルスの後継国家が、ヨーロッパと中央アジアにまたがるロシア帝国だと誇示した。チンギス系統のタタールの王子を一時皇帝の座につけているし、後継者ボリス・ゴドゥノフもタタールを源としている。支配民族の一部だったといえる。

 

このような事情だから、タタール起源のロシア姓は多いとされる。ただし、ロシア帝国に参入したタタール支配層はみな正教に改宗している。もうひとつの軸がキリスト教国家である以上そうなるだろう。したがってあからさまにイスラーム名を名乗るタタール王族はまずいない。

 

だからラフマニノフがラフマーンに由来することは、むしろなさそうだ。バラモンから来ているというのも、たぶんラフマニノフ家の異民族起源説の変奏なのだろう。

 

のだめのラフマニノフ

見てきたかぎり男はこのころの玉木宏、女は浜辺美波がいちばんの美形だと思う。

 

追記:トゥルシンバエワ記事参照

追記:ラフマニノフ簡裁記事参照

E.V.サロージャー

 

f:id:moonleex:20210126234248p:plain

nataraju taladaalchu nagadeva (Nagula Chavithi 1956 telugu)

 長いことこの蛇踊りをジャムナだとばかり思っていたのだが、E.V.Saroja

ஈ. வி. சரோஜா サロージャーであることがわかったので訂正と紹介をしておきたい。

 

サロージャーは1935年にタミルナードThiruvarurのEngan village に生まれたのでE.Vの名がついた。タンジャーヴールにも近く、カマラーやパドミニ、ヴァイジャンティマーラーの師匠 Vazhuvoor Ramaiah Pillai はいとこだったので子供のころからバラタナーティヤムを学んだ。スネークダンスの技術が完璧なのも当然だった。1951年にデビューし、63年までタミル、テルグ映画に出演した。

 

sokka potta navabu (Gulebakavali 1955 tamil)

 MGR映画に踊り子として登場。ヒロインは T. R. Rajakumari だった。

 

Nadodi Koottam (Amara Deepam 1956 tamil)

kattaikatti (同)

 これはハリウッド映画「心の旅路」の翻案で、冬ソナにいたる記憶喪失もののはしりだった。シヴァージとサーヴィトリのカップルだが、踊り子のパドミニがからみサロージャーはその妹分だ。

 

paduchudanam railubandi pothunnadi (Penkipellam 1956 telugu)

 NTR映画でまだダンサーのひとりだ。

 

vanga machan vanga (Madurai Veeran 1956 tamil)

同デュエット

MGRのマドゥライヴィーランで、サロージャーは広く知られることとなる。

summa kidntha sothukku kashtam (同)

ラ-ギニとラリタのデュエットはめずらしい。

 

yengi yengi (Neelamalai Thirudan 1957 tamil)

 義賊ものでアンジャリーデーヴィの友人を演じた。

 

paar (Puthumai Pithan 1957 tamil)

サロージャーは表情のアビナヤに長けている。MGRが王子の映画で宮廷医の娘になった。悪人が医師を脅してMGRに薬を飲ませる計画。

then madhuvai vandina(同)

 歌と踊りでMGRに陰謀を知らせようとする。この切れ長の大きな目はアジャンター壁画からムガル細密画までインド独特のものだ。

 

aadavanga annatha (Chakravarthi Thirumagal 1957 tamil)

 相方は G. Sakunthala。メイクが変わってきている。

 

ada moona asal (Kathavarayan 1958 tamil)

thane thanthanane (同)

 シヴァージは追放されたシャクティの息子で変身能力がある。

 

halo halo o ammayi (Mithrulu 1961 telugu)

どこかで聴いたような。

oho fashionula (同)

ANR二役映画のヒロイン。ヘプバーンの太眉が天下の時代だった。

 

o ante teliyani o devayya (Bandipotu 1963 telugu)

 NTR映画のダンス場面に出演した。悪人の愛人役だが、終盤にもう一つ見せ場がある。

 

f:id:moonleex:20210129214132j:plain

サーヴィトリと

カーンチャナー

f:id:moonleex:20210122221647j:plain

 

Kanchana は前に百合ダンスで紹介した名手だ。詳細な記事が9年前に出ている。

 

challani swamivi (Veerabhimanyu 1965 telugu)

タミル語版も同題名で製作された。

 

mundativale naapai (Aatma Gawravam 1965 telugu)

競演は Rajasree だが、Vijayalalitha と似ているのでいつも混同する。

 

ambavo shakthivo (Nenante Nene 1968 telugu)

Naan (1967 tamil) のリメイクでジャヤラリターの役を継いだ。オリジナルはカラーなのにこちらは白黒で、比べたら気の毒だ。Naan の踊りはジャヤラリター記事で紹介している。

 

sari sari vagalu telisera gadasari (Bhakta Tukaram 1973 telugu)

アーンドラ・プラデーシュ出身でバラタを習得しているが、ここでの衣装はクーチプーディのもの。前垂れが一本だ。

poojaku veleyara (同)

ANRを誘惑するが、神様映画なので返り討ちにあう。

 

sanaga poola (Tatamma Kala 1974 telugu)

土地上限法に翻弄された地主一家の運命を描いた作品で、NTRの妻を演じた。

トリヴァンドラム自転車生活

Cycling holidays in Kerala.

 

ケーララは山と狭い海岸線の平野で構成されているので、横浜や神戸を引き伸ばしたようなかんじだし市内は車が多すぎ自転車には向かない。それでも自転車乗りは生息していて、山をめざすか海岸線を走っている。

tubeのup主たちはおしゃべりと自撮りが大好きな印キャで、道路事情や風景がわかる映像はあまり多くない。

 

Netta - A Cycle Ride to Nature's Lap | Chittar Dam

トリヴァンドラム駅東で鉄道線路を北上してから東に向かい、タミルナード州境をこえNettaのダムで遊ぶ。

 

Bicycle ride to Ponmudi on a Folding Cycle

上のチャリンカーが折りたたみ自転車で標高1100m

をめざす。西ガーツ山脈中のPonmudiは新婚旅行先で有名なところ。箱根峠は846mだから相当な難所だ。

 

All Kerala cycle ride | Best 3D Route Preview | Kasaragod to Trivandrum

ケーララ北端から州都への自転車行を3D地形図で表示。同上の人が作成した。

 

Ride to Kallar

Ponmudi手前にある観光地Kallarまで川沿いに行く。

 

shangumugam to pozhikkara beach

国際空港南のShangumgamから海岸沿いに細道を走り、Kovalam海水浴場手前のPozhikkara beachへ。

 

Cycle Ride To Kovalam |58Kms

州都北端から66号とNH Bypass roadを使って、海沿いにKovalamへ。

 

RIDING THE BEST ROAD IN TRIVANDRUM

上と同じ道を女性チャリンカーが走る。一本道だが起伏があるようだ。

 

solo cycling journey to thenmala kerala india from thiruvananthapuram

州都から60kmほど北方のThenmala ダムへ。ずっと上りで苦しかったようだ。自転車はインド国産で、価格は日本と同じくらい。

 

MTB Trails | Trivandrum

野道をマウンテンバイクで走行する。関東平野の用水や小川も往古はこのようだったのだろう。

 

Cycle ride to thampuranpara

市内から10kmほど北の岩肌が名物の丘をめざす。

 

 31 Km - Cycling with Sunday Bikers in Kozhencherry

ケーララ中部のKozhencherryからRanniまで東に向かう。Drishyamロケ地のThodupuzhaから50kmほど南にあたる。

 

おまけ 

Mohanlal Cycle Ride Through Trivandrum City

モーハンラールがチャリでカフェ前を通るところ。

 

ハヌマーン

f:id:moonleex:20210108220315j:plain

 

人民網に淘宝でウルトラマンが人気との記事があった。いまの奥特系列の汎神殿はふくれあがって、だれがだれやらわからない。

しかしハヌマーンが欠けているのはわかる。日タイ合作映画ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団の主人公だ。宇宙人ではないかもしれないが、非業の死をとげたタイの少年をウルトラの母が超人として蘇らせたのでファミリーの資格はあるはずだ。

 

f:id:moonleex:20210108221740j:plain

 

このハヌマーン、タイではアヌマーンは踊りを踊るし悪人は容赦なく殺すので、だいぶ性格はちがっている。空を飛ぶとき もウルトラふうでなく、風神のように飛んでいく。

映像はウルトラ映画やハヌマーン映画をモンタージュしたものだ。タイではラーマーヤナRamakienとして再創造され、ハヌマーンの比重が大きい。太陽神スーリヤとのエピソードなどは残っている。

 

f:id:moonleex:20210108224446g:plain

 

顔は怖い

 

f:id:moonleex:20210108224544j:plain

 

しかし画像検索すると、いまのタイで人気なのは圧倒的にウルトラ版のほうだ。映画だとウルトラ一族は仏の眷属のようだった。

 

f:id:moonleex:20210108225104j:plain

 

2012年に公開されたCGアニメ ตัวอย่างหนัง Yak:The Giant King

これは戦争で崩壊した世界を、記憶を失ったロボットのラーヴァナとハヌマーンがさまよう話だ。二体は製作者のラーマを探して旅をかさねる。手前がハヌマーン