宝箱はミミック(2)

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不思議な映像を見つけた。パドミニとヴァイジャンティマーラーのダンスバトルである kannum kannum kalanthu のヒンディー版 aaja to aaja をカラー化したものだ。原作の Vanji Kottai Valipan (1958 タミル)は Raj Tilak としてヒンディー語で同時製作された。主役は同じだが、悪役はヴィーラッパーからプラーンになっている。

ただし  aaja to aaja は元にくらべあまり魅力がない。タミル版を最初に知ったからかもしれないが。
北と南では音楽の好みがまったく違う。 さらに翻訳によって歌のリズムがおかしくなり、いきおいが減じている。色が付いても、口元がヒンディー語にシンクロしているのがよくわかるくらいのとりえしか感じられない。 Raj Tilak は興行では惨敗したものなので、 なぜタミル原本でやらなかったのか不明だ。

colored by AI とあり最近のカラー化技術を使っているようだが、これが個人の手によるものなら白黒映画のカラー化はとてもたやすい時代に入ったのだろう。up主のチャンネルには短いがいくつものカラー版映像がある。主が作者本人かミミックなのかはわからない。

カマル、ラジニ、シュリーデーヴィーのボート遊びや、B.サロージャー・デーヴィなど、このブログでも紹介したもののカラー映像が見られる。いちどカラーを目にすると、白黒を見るのがしんどくなることがあるのでとくにおすすめはしない。

 

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kannum kannum kalanthu は、ダンスバトルの最高峰として紹介してきた。両者の技量もそうだが、たたかいに真剣味があることが大きい。同じヴァイジャンティーマーラーの Amrapali や、カマラー大師でも Konjum Salangai などは予定調和的なバトルのまねごとでおもしろくない。空虚な大作という感じだ。 

技術はヴァイジュのほうが上で、タミル版とヒンディー版の比較映像を見るとヴァイジュは両者で動きがシンクロしている。達人だ。パドミニはもっと大ざっぱだ。踊りの魅力とは別のことではあるが。

ヴァイジュは背が高いし手足も長く、パドミニはトラヴァンコール姉妹でもいちばん小柄だった。たたかいの終盤で一瞬パドミニがひるみ、ヴァイジュに腕を取られて振り回されている。そのままなら崩されて倒され、マウントを取られボコボコにされていただろう。そこでジェミニが助けに入り、ヴァイジュはたたかいに勝って恋のいくさに負けることになる。そういう脚本なのだが。

実際は、大まかだが剛直でタンダヴァが得意なP姐がたおやかなV姐を組み伏せたかもしれない。こういう想像の余地が生まれるのが、ダンスバトルの愉しみなところだ。