熱褲

 

熱褲はホットパンツの中国訳で、デニムのものは牛褲式熱褲となる。

人物は楊菁菁。製作監督は香港のドキュドラマ、東方巨龍(1988)のひとコマだ。短パン姿ははじめて見た。

右端は無敵鴛鴦脚、一代槍王の王群で、浙江省東陽の気功村を訪問した。これから達人が、風船のうえに乗る軽功を披露する。

 

ビリビリ中字幕

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作品名はいかにも香港だが、日本ではジェット・リーの軌跡の名で光盤が発売された。ただし、李連杰は10分かそこらの昔の映像が流れるだけで、龍も出ない。

はなしは香港記者の菁菁が、杭州西湖のほとりで王群と偶然ぶつかるところからはじまる。すぐさま蹴りを入れる菁菁。しかし李連杰の師兄と知って、ころりと態度をあらため王師父と呼ぶ。菁菁は武術記事を書くために来ていたのだった。協力を申し出る王群。

 

 

 

ふたりはまず河南省嵩山少林寺を訪ねる。少林寺武校練習場で、若者たちの練功を見る。

歴代弟子の墓を見学したさい、誤って大鍋に転落して煮込まれた少年僧の墓塔も紹介されていた。料理に人骨が入っていたので気づかれたという。そんなはなしは、少林寺映画では出なかった。

 

 

 

それから列車に乗って、北京近郊の八達嶺長城に向かう。王群は水滸伝林冲や血滴子を率いた年羹堯も、少林寺の流れを引いているという。民間説話にあるのだろうか。

 

 

長城で口喧嘩する菁菁。香港映画では、いつもこの怒り顔だ。

 

王群は自身や李連杰が所属した北京武術隊の練武を見せる。出身者として戈春艶の名も挙げられる。

 

 

 

さらに日中戦争発端となった北京西郊の盧溝橋に行き、少林寺も抗日活動に参加していたと語る。

 

 

盧溝橋欄干の獅子は、一体ごとに表情が違うのだそうだ。

 

 

そしてこのドキュドラマのいちばん危うい部分である、浙江省東陽の気功達人たちが紹介される。ビリビリの弾幕でも、武術が雑技にさらに魔術になったと笑いの種にされている。バイクで手足をひっぱったり、腕に太針を刺して車をひっぱるなどのたぐいだ。ガラスコップを食べるとか、日本のスナックで見かける光景がつづく。軽功の仕掛けは、よくわからなかった。

 

扇風機を指で止める。

 

東陽は功夫のさかんなところで、木彫の名産地でもある。現在は橫店影視城で名高い。たぶん土地柄に合っていたのだろう。著名な映画ドラマの古装片はここで撮影されているから、ずいぶん現地採用もあるのではないか。

 

 

 

つづいてやっと李連杰の映像が流れる。父親は早くに亡くなり、母の手ひとつで育ったとのことだ。連杰には抜群の功夫の成績もあるが、甘えっ子のような愛嬌が他の武打星との際立った違いかもしれない。

 

最後に軍隊の拳法だったという兵家拳を見学し、ふたりの旅はおわる。

 

 

 

杭州西湖から長城にもどり収穫はあったかとたずねる王群に、それ以上のものがと潤んだ眼でこたえる菁菁。かたく抱き合うふたり。そんな演出をたのんだおぼえはない。