といってもパドミニが巨人化して進撃するわけではない。トラヴァンコール姉妹主演のタミル映画 Ponni(1953) に、なぜか当時の巨漢レスラーでハンガリー生まれの King Kong(wiki) とインドのダーラー・スィンDara Singh の試合が挿入されている。バトル場面は10分以上つづき、パドミニはリングサイドで観戦している。
プロレスは当時アジア全体で人気があり、マドラスでも盛りあがっていた。先の二人は訪日して力道山とも対戦している。
映画は観客の見たいものを見せるのだから、歌や踊りに並んで試合を放映したということだろう。TV中継もなかった時代だ。
南アジアでのレスリングの威勢を示すものとして、パーキスターン元首相 Nawaz Sharif の妻でパーキスターン・ムスリム連盟シャリーフ派の党首である Kulsoom Nawaz は、戦前の伝説的レスラー、グレート・ガマの孫だという逸話があげられる。
コングに脳天チョップするスィン
Ponni は生き別れた姉妹がいっぽうは富豪の養子になり、片割れはそれと知らず家の召使として入りこむという女ムトゥ譚だ。ラリタが貧しく育った姉ポンニを演じている。パドミニは性格の悪い令嬢となり、ラリタにビンタしたり階段から突き落としたりやりたい放題だったが試合観戦の影響か?
キルッシュナー(クリシュナ)神話の劇中劇 Bama Vijayam でラリタがルクマニ、パドミニはサッティヤバーマー、アンビカがキルッシュナーの三角関係を演じている。ラーギニはナーラダ仙に扮している。WikiとIMDbにはスクマーリも出ているとあり、ほんとならトラヴァンコール一族 総出だが、クリップでは姿を確認できなかった。
アンビカとスクマーリのスネークダンス (マラヤーラム初の蛇映画 Sarpakkadu 1965 )
パドミニとアンビカ
キングコングはインドが気に入ったか映画出演をつづけた。ダーラー・スィンも役者となり、初主演作はその名も King Kong (1962 ヒンディー)で、ラスボスの King Kong はコング当人がつとめて再共演となった。コングは同じ年にヘレンと B.Saroja Devi 出演の Hong Kong (1962 ヒンディー)にも登場している。
King Kong の監督は「ホットポテト」記事のソースである Parasmani(1963) の Babubhai Mistry で、インド特撮のマスターとして功績を称えられている。パドミニ・プリヤダルシニ で紹介した Sampoorna Ramayana (1961) は同監督作で、カーマ焼殺の特殊効果はその手によるものだ。